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仙台高等裁判所 昭和25年(う)134号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(理由)

本件昭和二四年八月九日附起訴状にはその冐頭中、「被告人は昭和二三年八月賭博罪により罰金五百円、同年十月賭博並恐喝罪で懲役三年但し五年間刑執行猶予の判決を受け現に刑執行猶予期間中のものであるが」表示しており、続いて「被告人は石川賢一と共謀の上昭和二四年六月一九日午後五時一五分頃膽沢郡水沢町大町東京塗裝社櫻井五郞方に止宿中の塗裝工野村房吉同鈴木富夫を恐喝して金品を交付せしめようと企て先づ石川賢一が銭湯より帰途にあつた前記両名に対し、住所、職業等を訊した上「兄弟分がいるから挨拶に来てくれ」と申向けて同人等を水沢町駅前通り大林寺墓地内に連行したる上石川は「仁義を切れ」と同人等に要求し被告人は黑眼鏡及びネクタイを脱して喧嘩の用意を爲したところ同人等が恐れて「自分等は職人で仁義等知らないから」と言うと被告人は「今友達が裁判にかゝつているから金五千円ばかり都合してくれ」と金品を強要したが前記両名は所持金がなかつたので之を断ると「此処は人目につくから他所にゆこう」と同町裏町「更科飮食店」に連行し被告人は野村房吉に対し「俺等は朝から飯も食べていないんだ金を都合してくれ」「時計を金の代りに置いて行け」「金を持つていないなら店え行つて持つて来い」と金員を強要し前記両名をして右要求に應ぜざれば如何なる危害を加えらるべきやも知れざる旨感得畏怖せしめ結局前記両名をして主人櫻井五郞より金五百円を借受けしめ以て前記両名より金五百円を交付せしめて恐喝し、第二被告人は前記第一事実記載の恐喝事件が水沢町警察署員の探置するところとなり捜査開始せらるゝや前記事件の届出に難癖をつけ櫻井五郞より金員を恐喝することを企て同年六月二三日頃前記金五百円を右櫻井方に持参し同人に返還したるが翌二四日更に同人方に赴き同人に対し「恐喝でも何でもない、金を返して仕舞つたのに之を問題にするとはけしからぬこんな些細な問題を警察に訴えるなら殴り込みをかける」と脅して前記事件の届出者を糾明する爲櫻井五郞を連行して水沢町警察署に赴き同署に於て前記事件捜査主任である巡査部長我妻沢雄を怒鳴りつけ更に前記更科飮食店に赴いたものであるが同所に於て前記櫻井五郞に対し「袋町に出入りがあつて怪我人が出来て治療費が要るが三千円程貸してくれ必ず返すから」と金員を強要し前記櫻井をして右要求に應ぜざれば如何なる危害を加えらるべきやも知れざる旨感得畏怖せしめ同日前記櫻井方に於て同人より現金三千円を交付せしめて恐喝したものである。」と記載している。しかるに刑事訴訟法第二五條末項には起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し又はその内容を引用してはならない。」と規定しているのであるから、前科の事実は、それが常習累犯窃盜のように法律上犯罪構成要件となつているか、又は事実上犯罪事実の内容をなす場合でない限り、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞あるものとして起訴状にこれを記載してはならないものと解する本件において前記起訴状冐頭に記載した前科のある事実は法律上犯罪構成要件をなすものでもなく、又本件犯罪事実の内容をなすものでもないからこれを起訴状に引用することは刑事訴訟法同二五六條末項に違反するものといわねばならない。しかして同條項にいわゆる起訴状一本主義は新刑事訴訟法の根幹をなす重要な原則であり、これを單なる訓示規定と解することはできない。これを嚴格な効力規定と解するのでなければ、その精神は貫徹せられない。しかるに右の起訴状の瑕疵は性質上事後にこれを拂拭するに由ないものであるから、かかる瑕疵ある起訴状は無効というべきである。從つて原審においては刑事訴訟法第三三八條第四項により判決で公訴棄却の言渡をすべきであつたのにかゝわらず、不法に前記起訴状による公訴を受理して本案の判断をしたものであるから、原判決には刑事訴訟法第三七八條第二号に該当する事由あるものというべきである。

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